Sゲームブッカーのブログ

ゲームブック、Kindle本、モバオク出品物、Amazonについてのブログを書いていきます。 アメブロでは、「愛すべきゲームブック」というブログを書いています。

Kindleゲームブック「SAIKAI」

kindleゲームブック「SAIKAI 」http://t.co/dfYzoCC4Xl 

560パラグラフゲームブック。2010年にE★エブリスタで公開後に好評を得まして、大幅に加筆修正した唯一の長編。主人公はとある理由で体外離脱(幽体離脱)して、奇妙な異世界の町を探索します。能力値やサイコロ戦闘などはなく、フラグチェックとマッピングをしながらプレイ、真の結末に辿り着くには試行錯誤が必要。

コンセプトは、プレイするたびに新しい発見がある、多彩なフラグの使い方、最も感動するゲームブック、体外離脱シミュレーター。


ここからはSAIKAIについて書いたブログを古い順に再掲載しています。


それにしても、最初にエブリスタに公開したのが7月10日だから、案が出て完成までに1年ぐらいかかってしまいました。いったいどれほどの人がこの完全版をプレイすることになるのだろう。

なかなか良い物語だと思うので、機会があったらプレイしてもらいたいです。この作品によって、ゲームブックを作る人やプレイする人がもし増えたら、苦労して作った甲斐があります。


体外離脱が題材の純愛+ホラー+ちょっぴりエッチ+ジョーク物語で9作目ぐらいになります。パラグラフ数約530で初の長編、主に双方向システムでページジャンプ機能(エブリスタ版)を使って物語を進めます。サイコロ1個と筆記用具、フラグチェック、基本的にマッピング必要。地図なしでもプレイできますが、迷ってしまう可能性は高いです。プレイするたびに新しい発見があるようなものを目指しました。現在は挿し絵を多数追加するべく頑張っています。簡単にはクリア、ベストエンディング(やり込み必要)を迎えられないような仕掛けをしてあります。そのためか、クリアした人は多くないようですが、2も現在制作しています。


今日は作品説明も更新しました。この作品は、約1年半前(2010年)に完成した20年程ブランクがあって久しぶりに作ったゲームブックです。それなのに初めての長編だったので多少無理があったと思います。今では自分の代表作になり、2も作っている最中だったりします。特に参考にしたゲームブックなどはありません。ただ、体外離脱を題材にした作品ですので、やり方などは参考にしたものがあります。

実はまだ完成したとは言えず、エブリスタで公開しているのは初期バージョンであり、今作っている加筆修正版(Kindle版よりも前のバージョン)が本物になります。それぐらいに改造を重ね、別なものになっています。


エブリスタで約4年前(2010年7月)に公開した初の、そして唯一の長編ゲームブック「SAIKAI」をKindle本としてKDPにて出版しました。543パラグラフということでSigilで電子書籍化するのも今までのと比べると読み込みが数倍かかり、バグチェックなども含めていろいろと大変でした。1パラグラフずつ確認して文章を修正したり、電子書籍でプレイしやすいように変更したり、挿絵も新たに3点描いたりしてやっと完成しました。

エブリスタ版の後にCD-R版も販売したことがありましたが、さらに細かな内容変更がされていて、Kindle版が最終バージョンになると思います。

この作品は自分でも良く出来たと思っていまして、最終バージョンを公開できたことは自分にとってかなり重要なことでした。ちょっと大袈裟かもしれませんが、SAIKAIを生み出し、公開することが自分の使命なのではないかと思ったりしたこともありました。他のゲームブックその他も表紙画像を変更してあったり、内容を修正してあったりしますので、良かったらプレイしてみてください。AmazonでSゲームブッカーで検索して鉛筆画の表紙が目印です。


Kindle版のプロローグからパラグラフ1まで。


プロローグ


 未希を誰よりも愛していた。初めての彼女だった。雪の降る道で、足をくじいてうずくまっていたところを真っ先に駆け寄って、


「大丈夫?」


 と声をかけたのがきっかけだ。初々しいセーラー服姿に長い黒髪、大きくて潤んだ瞳に胸がときめいた。付き合い始めてそろそろ1年が過ぎようとしており、記念日にはどこか旅行にでも行こうと2人で話していた。それなのに……。


 記念日まであと数日という日の朝、未希は女子高の登校中に突然飛び出してきた車にはねられてしまう。すぐに近くの病院へ運ばれたが、打ち所が悪かったらしく助からなかった。未希のお母さんから涙声で電話があり、病室に無我夢中で駆けつけた時、未希は顔に白布をかけられてベッドに横たわっていた。白布をめくる俺の手は絶望で震えた。色白で愛らしい顔には傷ひとつなく、それがせめてもの救いだった……。



 アパートに戻っても何もする気になれず、誕生日に貰った未希の手編みのセーターを抱き締めて、部屋の片隅に座り込んでずっと泣いていた。腕時計を見ると、夜の7時が少し過ぎている。10時間も泣いていたのか。さすがに泣き疲れて、気晴らしにテレビをつける。体外離脱の特集番組をやっている。体外離脱体験者が、亡くなった祖母に会って話をしたと真剣な表情で語る。


 これだ!


 思わず画面に釘付けになる。


 意識が肉体を離れて空を飛んだり、遠く離れた土地を訪れることができるという体外離脱に興味を持ち、本などを読んで何度か試したりしていたが、1度も成功したことはなかった。


 簡単な離脱法が紹介される。これならいけるかもしれないと思えた。未希は今、どんな気持ちでいるのか知りたい。どうしても、再び会って話がしたかった。


 さっそくパジャマに着替え、その上にセーターも着る。離脱成功への力を貰えそうな、そんな気がしたからだ。カーテンを閉め、部屋の明かりを消し、腕時計を外してテーブルの上に置いてからテレビも消す。ベッドに仰向けに寝て、両腕は体から少し離し、手のひらを上に向ける。ヨガの休息のポーズというやつだ。ゆっくり深呼吸しながら全身の筋肉を脱力させ、肉体の感覚がなくなるまでリラックスさせる。眠りに落ちるギリギリまで意識し続け、まどろみ状態を維持する。


 ひたすら意識を保つことに集中し続けていると、徐々に体が細かく振動し始めた! これは初めての体験だ! 体は金縛り状態になっているようで、思うように動かすことができない。しばらくすると、闇の中にぼんやりと未希の顔が浮かんできた! 微笑んでいるようにも、悲しそうな表情をしているようにも見える。少しの間見つめ合っていると、徐々に未希の顔が遠ざかり始めた。


 待ってくれ!


 心の中でそう叫び、動かない右腕を意識的に伸ばす。消えてゆく未希の顔。懸命に右腕を伸ばし続けていると、ずるりと体と体が離れる感覚がした!



用意するもの


 紙と筆記用具、物語の展開によってはサイコロが1個必要になります。


フラグチェック


 “Aをチェック”などの指示があったらAとメモします。“チェックがある”とは、チェックしてまだ消されていない、“チェックがない”とは、チェックしたことがないか、消してあることを意味します。消すように指示があったら斜線などを引いて、何を消したかわかるようにしておきましょう。


地図の描き方


 進んだ距離によって道の長さを変えます。○へ少し進む、○へ進む、○へしばらく進む、○へしばらく進み続ける、○へかなりの距離進むの順で距離は長くなり、○へ進むが2回続いた場合は、しばらく進み続けると同程度の距離になります。見つけた建物やチェックしたフラグなども書き込んでおくと良いでしょう。



【1】


 浮遊感を感じてゆっくり目を開ける。ベッドに寝ている自分を2メートルほどの高さから見下ろすように浮かんでいた。ついに体から抜け出ることに成功したようだ!


 この体に戻れるだろうか? 


 そんな不安がよぎった瞬間、背中から強い力で引き戻されそうになる。背後を見ると、背中から透明なへその緒のようなものが伸びていて、寝ている自分の心臓の辺りから伸びる緒とつながっていた! これが肉体と抜け出た意識体をつなぐ「魂の緒」と呼ばれているものなのだろう。とっさに、


 戻れなくてもいいんだ!


 と強く念じると、引く力がフッと緩まった。


 その隙に空中を漂い、ベランダへ続く窓を開ける。外は薄暗く、離脱前と同じような時間帯のようだ。空中を漂ったままベランダへ出ると、見慣れない町並みが広がっていた。振り返ると、アパートがあると思っていた場所には何もなく、魂の緒がゆらゆらと夜空に向かって伸びていた!


 慌てて手足をバタつかせて夜空を飛行するが、慣れないせいか、すぐにバランスを崩してゆらゆらと地面に落下してしまう。強く尻餅をついても、不思議なことに痛みは感じない。きっと抜け出した体だからだろう。


 立ち上がって砂のついた手を払っていると、離脱後は最初に自分の両手のひらを見ると本に書かれていたことを思い出した。それは抜け出た意識体の感覚をつかむためらしい。両手のひらをまじまじと見る。指紋まではっきりとしたいつもの手だ。服装は離脱前と同じで、パジャマの上下にセーターを着ている。ズボンのポケットに手を突っ込んでみるが、何も入っていない。足元はやはり裸足だが、何も感じないからこのままでいいだろう。


 辺りを見回すと、ここはどこかの住宅街のようだ。落下したのは家々が建ち並ぶ十字路のちょうど真ん中だった。明かりのついた家は少ないが、今は何時頃なのだろう? 辺りは静まり返り、人や車が通る気配は今のところない。十字路から延びる道の先はどれも薄暗くてよく見通せないが、街灯や月明かりがぼんやりと道を照らしてくれてはいる。月が出ている方を東として、まずはどの方向へ進もうか。東の道は少し先で途切れ、西の道は住宅街の間をかなり先までまっすぐに続き、南の道は先の方で折れているように見える。北の道の先には左手に高い建物が見える。まずはどちらへ進むべきか迷っていたその時だった。


《信治なのね》


 聞き覚えのある声が脳内に響いた! 未希の声だ! どうやら未希と同じ世界に離脱できたようだ。


「未希か! 今どこにいるんだ?」


 思わず叫んで辺りを見回す。


《町のね、どこかに……》


 どこか遠くから聞こえてくる気がする。どうやらテレパシーを使っているようだ。


「どうした? 町のどこかにいるのか?」


《今は言えないの》


 未希の予想外の返答に戸惑う。


「何で言えないんだよ!?」


 それきりテレパシーは途絶えてしまった。未希に何かあったのかもしれない。町を歩き回って探すしかなさそうだが、何かの拍子に肉体に引き戻されてしまう可能性もある。その前に何としても未希を探し出そう。




東へ進む 12へ


西へ進む 28へ


南へ進む 46へ


北へ進む 18へ


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